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国による風俗習慣の違いから、誤解を招き海難事故を招くこともあり得る。

 

電子海図の上に障害物等の位置を描く場合、測地系の違いにも注意する必要がある。日本の電子海図(ENC、ERC共)は、現在、法律(水路業務法、測量法施行令)で決められているため、日本測地系(Tokyo Datum)で作られている。しかしながら、IHOのS−52ではWGS−84(World Geodetic System 1984)と規定されている。日本海域の紙海図は2001年度にすべての数値化が完了する予定とされている。ここまでは日本測地系のまま進むものと推察される。

日本のENCも将来はWGS−84に変換されるであろうし、ERCもこれに追随しようが、その時期は不透明である。周知のように米国海図はNAD−83(North American Datum1983=WGS−84)であり、英国海図は現在やや不統一である。それぞれの国がそれぞれの紙海図を現状のままIMO/IHO基準に準じて電子化した場合、搭載している電子海図の違いが海難に結びつくこともあり得る。

周知のように、日本沿岸でのDGPSの整備が終わると、船舶位置の精度は±10mまで向上すると言われている。測地系の全世界的な統一が終了するまでは、日本に来航する外国船に、緯度・経度で画面表示用の危険海域などを通知する場合、人間の判断を介さない場合には誤解を避ける方策が必要である。もちろん、灯浮標等の航路標識が完備している海域では、これらを基準に相対的な方位角・距離でデータを与えれば問題無いが、航路標識が無いオープンシーでは検討を要する事項である。

陸上レーダーの情報を電子海図表示装置に表示するときにも、測地系は上と同様に問題になる。以上、電子海図表示に関する問題点をまとめるとつぎの?〜?となる。

?電子海図表示装置の設計変更の実現性

?インターフエイスの標準化

?描く図形の標準化

?測地系のWGS−84への統一

 

5. 小型の日本国籍船について

日本船籍船では、今後普及が進むと考えられるERCを表示する装置に重畳する方法が考えられる。船舶側の受信設備として、大多数の場合FAXかノート型パソコン程度の分解能(FAX)で十分利用できるものを想定する必要があろう。1996年4月1日から、小型船舶用レーダー(第4種レーダー)の操作については無線従事者の資格が不要となったので、機器の価格が家電製品と同等になれば、今後プレジャーボート等でも航海用電子参考図表示装置とレーダーの併用(あるいERCが表示可能なレーダー)が見られる可能性もある。欧米でのプレジャーボート数は人口の2%〜3%と言われている。日本の場合、これと比較すると一桁小さいので、マリンスポーツの環境整備が進めば、今後この市場は伸びるとする考え方がある。予想したごとく進んだ場合、海難事故の可能性も増加するのであるから沿岸航行援助情報センターの役割は重要なものとなる。

 

 

 

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